9割以上の保育士が「ヒヤリ・ハット」の経験あり! 一方で、約半数の保育施設でヒヤリ・ハットの振り返りを 「十分に行えていない」実態
ヒヤリ・ハットが起こったシーンランキング、第1位「園庭遊具の使用中」(73.6%)、第2位「おもちゃで遊んでいる最中」(51.4%)、ヒヤリ・ハットの事例から学ぶ子どもの安全対策とは
子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」を運営する株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)は、常勤保育士104名を対象に、保育士のヒヤリ・ハットに関する意識調査を実施しましたので、お知らせいたします。
■調査サマリー
■調査概要
調査概要:保育士のヒヤリ・ハットに関する意識調査
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査期間:2023年8月18日〜同年8月19日
有効回答:常勤保育士104名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
≪利用条件≫
1 情報の出典元として「子ねくとラボ」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
■ヒヤリ・ハットについて、「意味合いに加えて具体的な事例まで把握している」のは8割以上
「Q1.あなたは、「ヒヤリ・ハット」についてどれだけ把握できているのか教えてください。」(n=104)と質問したところ、「意味合いに加えて具体的な事例まで把握している」が81.7%、「意味合いは把握しているが具体例まではわからない」が11.5%という回答となりました。
・意味合いは把握しているが具体例まではわからない:11.5%
・意味合いに加えて具体的な事例まで把握している:81.7%
・聞いたことはあるが詳細な内容までは知らなかった:4.8%
・意味合いを間違えて把握していた:1.0%
・言葉を聞いたことがなかった:1.0%
■9割以上の保育士が、「自身の保育業務でヒヤリ・ハットを経験したことがある」
「Q2.あなたは、自身の保育業務でヒヤリ・ハットを経験したことはありますか。」(n=104)と質問したところ、「経験したことがある」が90.4%、「経験したことがない」が6.7%という回答となりました。
・経験したことがある:90.4%
・経験したことがない:6.7%
・わからない/答えられない:2.9%
■ヒヤリ・ハットが起きた場面、第1位は「園庭遊具の使用中」、第2位は「おもちゃで遊んでいる最中」
Q2で「経験したことがある」と回答した方に、「Q3.保育業務のどのような場面でヒヤリ・ハットが起きたか、多いものを教えてください。(上位3つまで)」(n=94)と質問したところ、「園庭遊具の使用中」が73.6%、「おもちゃで遊んでいる最中」が51.4%、「食事中」が36.8%という回答となりました。
・園庭遊具の使用中:73.6%
・おもちゃで遊んでいる最中:51.4%
・食事中:36.8%
・園外での移動・活動中:36.4%
・延長保育・土曜保育などの職員配置が少ない時間帯:24.7%
・プールなど水遊び中:22.1%
・保育施設内での移動中:21.0%
・登降園が集中する時間帯:11.6%
・午睡中(睡眠中):9.2%
・バス送迎の最中:1.4%
・その他 :6.4%
・わからない/答えられない:5.3%
■「つい目を離したすきに」や「アレルギー対応」などで、ヒヤリ・ハットが起きたことも
Q3で「わからない/答えられない」以外を回答した方に「Q4.Q3で回答した以外に、ヒヤリ・ハットが起きた場面があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=89)と質問したところ、「つい目を離したすきに」や「アレルギー対応」など47の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
・30歳:つい目を離したすきに。
・38歳:運動会で熱中症で園児が倒れたこと。
・34歳:トイレのドアで手を詰める。
・28歳:個人情報の書いてある書類の入れ間違え。
・58歳:保育施設の2階で、こどもが登って落ちそうな窓が開いたままになっていた。
・41歳:噛みつきや引っ掻き。
・25歳:アレルギー対応。
・29歳:鉄棒の遊具仕様の際に、手が滑り頭から落下してしまった時。
■ヒヤリ・ハットの振り返り、約半数が「十分に行えていない」と回答
「Q5.お勤め先の保育園では、事例の報告・共有によってヒヤリ・ハットの振り返りを行っていますか。」(n=104)と質問したところ、「報告・共有はしているが、振り返りは行えていない」が15.4%、「報告・共有・振り返りは行っているが、十分ではない」が30.8%という回答となりました。
・報告・共有はしているが、振り返りは行えていない:15.4%
・報告・共有・振り返りは行っているが、十分ではない:30.8%
・報告・共有・振り返りともにしっかり行っている:53.8%
・わからない/答えられない:0.0%
■「ヒヤリ・ハットの事例を保育業務に活用できている」のは約9割
「Q6.あなたはヒヤリ・ハットの事例を保育業務に活用できていると感じますか。」(n=104)と質問したところ、「非常にそう感じる」が30.8%、「ややそう感じる」が54.8%という回答となりました。
・非常にそう感じる:30.8%
・ややそう感じる:54.8%
・あまりそう感じない:13.5%
・全くそう感じない:0.0%
・わからない/答えられない:1.0%
■ヒヤリ・ハット事例の活用方法、「ヒヤリ・ハットが起きた場所の環境見直しを行っている」が74.2%で最多
Q6で「非常にそう感じる」「ややそう感じる」と回答した方に、「Q7.ヒヤリ・ハットの事例をどのように活かしているのか、教えてください。(複数回答)」(n=89)と質問したところ、「ヒヤリ・ハットが起きた場所の環境見直しを行っている」が74.2%、「ヒヤリハットの収集だけでなく、安全管理に向け分析を行っている」が52.8%、「事例や改善策について議論する機会を作り、保育園内で危機意識を高めている」が38.2%という回答となりました。
・ヒヤリ・ハットが起きた場所の環境見直しを行っている:74.2%
・ヒヤリ・ハットの収集だけでなく、安全管理に向け分析を行っている:52.8%
・事例や改善策について議論する機会を作り、保育園内で危機意識を高めている:38.2%
・未然に事故を防ぐことができる設備・製品を園内に揃えている:23.6%
・ヒヤリ・ハットが起きた場所は手厚く人員配置を行うようにしている:15.7%
・ヒヤリ・ハットマップを作り保育士と保護者に提供している:11.2%
・後輩・部下の育成に活用している:11.2%
・その他:0.0%
・わからない/答えられない:1.1%
■「毎月の職員会議で共有」や「子どもの動きを常に予測」などの活用方法も
Q7で「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q8.Q7で回答した以外に、ヒヤリ・ハットの事例を活かしている方法があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=88)と質問したところ、「その都度記入し、毎月の職員会議で共有」や「子どもの動きの予測を常にしている」など41の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
・37歳:職員の回覧板できちんと報告しています。
・34歳:職員間でのヒヤリ・ハットの事例報告による意識の再確認。
・35歳:自分の意識。
・47歳:常に人数確認をしている。
・33歳:その都度記入し、毎月の職員会議で共有。
・58歳:園長会等も活用して水平展開を図っている。
・25歳:子どもの動きの予測を常にしている。
■9割以上が、「ヒヤリ・ハットを報告しやすい職場」と回答
「Q9.お勤め先の保育園は、ヒヤリ・ハットを報告しやすい・しにくい環境であると感じますか。」(n=104)と質問したところ、「非常に報告しやすい」が33.7%、「やや報告しやすい」が56.7%という回答となりました。
・非常に報告しやすい:33.7%
・やや報告しやすい:56.7%
・やや報告しにくい:8.7%
・非常に報告しにくい:1.0%
■報告しにくい理由、4割が「報告することで立場が脅かされる可能性があるから」
Q9で「非常に報告しにくい」「やや報告しにくい」と回答した方に、「Q10.ヒヤリ・ハットを報告しにくいと感じる理由について教えてください。(複数回答)」(n=10)と質問したところ、「報告することで立場が脅かされる可能性があるから」が40.0%、「報告して上司から叱責を受けるのが怖いから」が30.0%、「ヒヤリ・ハットを報告しても活用されることは無いから」が30.0%という回答となりました。
・報告することで立場が脅かされる可能性があるから:40.0%
・報告して上司から叱責を受けるのが怖いから:30.0%
・ヒヤリ・ハットを報告しても活用されることは無いから:30.0%
・報告してもフィードバックを受ける機会がないから:20.0%
・報告が何に利用されるのか使い道が分からないから:0.0%
・報告書の作成が手間だから:0.0%
・その他:0.0%
・わからない/答えられない:20.0%
■ヒヤリ・ハット報告書の報告フロー、「中間管理職に報告後、園長に報告」「園長に報告後、管理本部に報告」が上位に
「Q11.お勤め先の保育園では、ヒヤリ・ハット報告書がどのような報告フローで伝わっていますか。」(n=104)と質問したところ、「主任等の中間管理職に報告された後、園長に報告される」が33.7%、「園長に報告された後、管理本部に報告される」が32.7%、「主任等の中間管理職に報告された後園長を挟み、管理本部に報告される」が22.1%という回答となりました。
・主任等の中間管理職に報告された後、園長に報告される:33.7%
・園長に報告された後、管理本部に報告される:32.7%
・主任等の中間管理職に報告された後園長を挟み、管理本部に報告される:22.1%
・園長にのみ報告される:9.6%
・どのような報告フローであるか知らない:6.7%
・主任等の中間管理職にのみ報告される:1.0%
・管理本部にのみ報告される:0.0%
・その他:4.8%
ー31歳:上司に報告し、当事者で分析した上で全体で共有会議が行われる
ー48歳:全体で共有される
ー28歳:職場全員で確認している
ー58歳:看護師から所属長
ー46歳:全体周知、園長へ報告している
・答えられない:3.8%
■まとめ
今回は、常勤保育士104名を対象に、保育士のヒヤリ・ハットに関する意識調査を実施しました。
結果として、常勤保育士の90.4%が、「自身の保育業務でヒヤリ・ハットを経験したことがある」ことが判明しました。ヒヤリ・ハットが起きた場面については、第1位「園庭遊具の使用中」、第2位「おもちゃで遊んでいる最中」となり、遊んでいるときにヒヤリ・ハットが起こりやすいようです。一方、事例の報告・共有によるヒヤリ・ハットの振り返りについては、「行えていない」または「行っているが、十分ではない」という保育士が約半数にのぼりました。他方、ヒヤリ・ハット事例の活用については、約9割の保育士が「活用できている」と考えています。その活用方法としては、「ヒヤリ・ハットが起きた場所の環境見直し」(74.2%)や、「安全管理に向けた分析」(52.8%)、「事例や改善策を議論する機会を作り、危機意識を向上」(38.2%)が上位になりました。ヒヤリ・ハットの報告環境についても、ほとんどの保育士が報告のしやすさを実感しているようで、報告書については、「中間管理職に報告後、園長に報告」「園長に報告後、管理本部に報告」などのフローで報告している保育園が多いようです。
今回の調査では、多くの保育士がヒヤリ・ハットを体験しており、特に園庭遊具やおもちゃで遊んでいるときにヒヤリ・ハットが起こりやすいことが明らかになりました。一方で、「個人情報の書いてある書類の入れ間違え」や「鉄棒の遊具使用の際に、手が滑り頭から落下してしまった時」など、すでに”起こってしまった”事例についても挙げられており、8割以上が理解しているヒヤリ・ハットとの認識に、乖離がある実態も明らかになりました。重大事故を未然に防ぎ子ども達の安全を守るためには、今まで以上に密な報告と振り返りの実施が必要でしょう。また、ヒヤリ・ハットが多いことが必ずしも保育の質が低いというわけではありません。ヒヤリ・ハットの役割や意義の理解を深め、報告しやすい環境を築くことも、より良い保育を行うためには重要でしょう。