保育士の63.4%が、配置基準見直しに対して「期待している」と回答!
〜子どもたちを見る「目」の増加で、精神的な負担の軽減や保育者同士の「コミュニケーション」の増加など、「保育の質」向上のポジティブ連鎖に期待も〜
子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」を運営する株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)は、現役保育士104名を対象に、【2024年版】保育士配置基準見直しと保育の質向上に関する定点調査を実施しましたので、お知らせいたします。
尚、本調査では、2023年版の同内容調査(※1)と比較して発表いたします。
■調査サマリー
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■調査概要
調査名称:【2024年版】保育士配置基準見直しと保育の質向上に関する定点調査
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査期間:2024年5月1日〜同年5月3日
有効回答:現役保育士104名
※1|【2023年版】保育士配置基準見直しと保育の質向上に関する調査:2023年4月7日〜同年4月10日|https://konnect-labo.jp/posts/ebliMzye
※2|構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
≪利用条件≫
1 情報の出典元として「子ねくとラボ」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
■現役保育士の62.6%が、勤務先の「配置数」または「処遇」が不十分と回答、2023年比16.6ポイント減
「Q1.政府はこの4月に、76年ぶりとなる4~5歳児の配置基準を改め、保育士等の更なる処遇改善も示しています。今現在、勤務している園の配置数と処遇について、どのように感じていますか。」(n=104)と質問したところ、「配置数・処遇ともに不十分」が38.5%、「配置数・処遇ともに十分」が32.6%という回答となりました。
<2024年(n=104)>
・配置数・処遇ともに十分:32.6%
・配置数は十分だが、処遇が不十分:18.3%
・処遇は十分だが、配置数が不十分:5.8%
・配置数・処遇ともに不十分:38.5%
・わからない:4.8%
<2023年(n=106)>
・配置数・処遇ともに十分:20.8%
・配置数は十分だが、処遇が不十分:17.9%
・処遇は十分だが、配置数が不十分:17.9%
・配置数・処遇ともに不十分:43.4%
■63.4%から、「保育士の配置基準見直し」に期待の声、2023年から3.1ポイント増加
「Q2.保育士の配置基準見直しの施策に対して期待していますか。」(n=104)と質問したところ、「非常に期待している」が33.6%、「やや期待している」が29.8%という回答となりました。
<2024年(n=104)>
・非常に期待している:33.6%
・やや期待している:29.8%
・あまり期待していない:26.9%
・全く期待していない:8.7%
・わからない:1.0%
<2023年(n=106)>
・非常に期待している:37.7%
・やや期待している:22.6%
・あまり期待していない:28.3%
・全く期待していない:9.4%
・わからない:1.9%
■「制度ができたことで職場環境や待遇の改善に期待できると感じたから」や「保育士の負担が減り、より良い保育につながる」などの声も
Q2で「非常に期待している」「やや期待している」と回答した方に、「Q3.どのような期待をしているか、自由に教えてください。(自由回答)」(n=66)と質問したところ、「制度ができたことで職場環境や待遇の改善に期待できると感じたから」や「保育士の負担が減り、より良い保育につながる」など53の回答を得ることができました。
<2024年(n=66):自由回答・一部抜粋>
・39歳:制度ができたことで職場環境や待遇の改善に期待できると感じたから。
・37歳:現代の子どもの姿や保育者への対応は、以前とは違い、子ども保護者ともに支援が必要な家庭が多い。そのため、子どもの人数に対する職員の数の比率を低くしてほしい。
・32歳:現代の保育にあわせた人員や必要に応じた加配の配置。
・35歳:人員配置により子どもたちとの時間が増える。
・61歳:保育士の負担が減り、より良い保育につながる。
・61歳:保育士のみならず、保育園勤務の栄養士や調理士他への処遇も考えてほしいです。保育園は保育士だけで成り立っているのではないです。
・41歳:認定こども園でほとんどが保育園部のため、3、4、5歳児の担任が1名だと休憩や書類作成の時間が取れず、休みも取りにくい。補助で入る介助員も免許がないので、免許所持している保育教諭が複数担任制になれば、もっと負担が少なく子どもとじっくり向き合えると思う。
<2023年(n=64):自由回答・一部抜粋>
・37歳:処遇、配置が充実することでよりよい保育環境をつくることができ、質の向上につながることを期待する。
・36歳:人員配置増で有給が自由にとれるようになってほしい。また、子育てしている保育士が時短や育休などをもっととれるようにしてほしい。
・36歳:加配児への配置を増やしてほしい。
・34歳:現場の状況を把握し、もっと必要なことを理解して改善して欲しい。
・31歳:特別支援児が急速に増加していることに反比例して、保育者の質が下がってきている。保育者の負担も大きくなっているので、給与の増加、増員に期待。
・27歳:大人の目が行き届く安全な保育ができることを期待している。
・40歳:保育士の業務量の多さや支援を要する子どもも増え、多様化しているので、何十年と変わっていない配置基準では目が行き届きません。子どもたちとじっくり関わりたくてもできないので、配置基準が変わり、手厚くなれば、もっと子どもたちに向き合えると思います。
■保育士の配置基準見直しの施策に対し、効果を実感している保育士は34.6%に留まる
「Q4.保育士の配置基準見直しの施策に対して効果を感じていますか。」(n=104)と質問したところ、「非常に感じている」が22.1%、「やや感じている」が12.5%という回答となりました。
・非常に感じている:22.1%
・やや感じている:12.5%
・あまり感じていない:45.2%
・全く感じていない:20.2%
■約6割が、保育士の配置基準見直しにより「保育の質が向上する」と回答、2023年比3.7ポイント減少
「Q5.政府の保育士の配置基準見直しによって保育の質が向上する、もしくは向上していると思いますか。」(n=104)と質問したところ、「非常にそう思う」が24.9%、「ややそう思う」が30.8%という回答となりました。
<2024年(n=104)>
・非常にそう思う:24.9%
・ややそう思う:30.8%
・あまりそう思わない:26.0%
・全くそう思わない:15.4%
・わからない:2.9%
<2023年(n=106)>
・非常にそう思う:30.2%
・ややそう思う:29.2%
・あまりそう思わない:28.3%
・全くそう思わない:7.5%
・わからない:4.7%
■配置基準の見直しにより改善される業務、2023年と同じく「精神的な負担が減る」が最多
Q5で「非常にそう思う」「ややそう思う」と回答した方に、「Q6.配置基準が見直しされたことによって業務のどのような部分が改善されると思いますか。(複数回答)」(n=58)と質問したところ、「精神的な負担が減る」が53.4%、「保育者同士のコミュニケーションに割ける時間が増える」が50.0%、「「目」が増えることで、子ども一人ひとりの成長に見合った保育が実践できる」が44.8%という回答となりました。
<2024年(n=58)>
・精神的な負担が減る:53.4%
・保育者同士のコミュニケーションに割ける時間が増える:50.0%
・「目」が増えることで、子ども一人ひとりの成長に見合った保育が実践できる:44.8%
・より安全を確保できる:41.4%
・時間外労働が減る:37.9%
・書類業務の見直しに使える時間が増える:37.9%
・保護者とのコミュニケーションに割ける時間が増える:34.5%
・その他:1.7%
ー41歳:子どもとじっくり向き合える
・わからない/答えられない:1.7%
<2023年(n=63)>
・精神的な負担が減る:73.0%
・より安全を確保できる:69.8%
・時間外労働が減る:66.7%
・「目」が増えることで、子ども一人ひとりの成長に見合った保育が実践できる:65.1%
・書類業務の見直しに使える時間が増える:55.6%
・保育者同士のコミュニケーションに割ける時間が増える:49.2%
・保護者とのコミュニケーションに割ける時間が増える:46.0%
・その他:3.2%
・わからない/答えられない:0.0%
■「さまざまなカリキュラムの充実」や「愛着面に課題のある子どもや障がいのある子どもにもよりじっくり向き合えるようになる」などの改善点も
Q6で「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q7.Q6で回答した以外に、「保育士の配置見直しによって改善される」と思う業務があれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=57)と質問したところ、「さまざまなカリキュラムの充実」や「愛着面に課題のある子どもや障がいのある子どもにもよりじっくり向き合えるようになる」など36の回答を得ることができました。
<2024年(n=57):自由回答・一部抜粋>
・35歳:さまざまなカリキュラムの充実。
・50歳:時差勤務の見直し。
・38歳:連絡ノートや書類などの作業も分担する人が増えれば一人一人の負担が減る。
・49歳:次の日の保育の準備に職員数が増えれば、手分けして効率的に作業ができる。
・61歳:より良い保育についての話し合いの時間が増えることにより、保育の質が上がると考えます。新卒の保育士の就職も期待できる。
・31歳:行事の準備などの業務負担の軽減。
・41歳:愛着面に課題のある子どもや障がいのある子どもにもよりじっくり向き合えるようになる。
<2023年(n=63):自由回答・一部抜粋>
・37歳:ケガが減る。
・37歳:一人ひとりにしっかり目が行き届き、クラスの中でも一人ひとりに合わせて寄り添った関わりができる。
・37歳:精神的な負担が減り、仕事に集中できることによって、より子どもの安全を守ることができる。また、子どもに優しく接することができる。
・31歳:新人育成の時間をとることができる。
・28歳:支援児への手厚い配慮(診断のついていない子を含めて)。
・40歳:勤務時間内にできなかった書類作成や指導案作成、保育準備やおもちゃづくり等が勤務時間内にできるようになる。
・27歳:保育室や玩具のこまめな消毒。
■配置基準の見直しによる保育の質の向上に期待できない/効果を感じていない理由、「人員が増えても十分な援助、支援や保育が難しいから」や「現場に入らない人に実際に改善しなければならない問題がわかるはずがない」など
Q5で「あまりそう思わない」「全くそう思わない」と回答した方に、「Q8.なぜ向上が期待できないのか、もしくは効果を感じていないのか、自由に教えてください。(自由回答)」(n=43)と質問したところ、「配慮の必要な子どもが増加していて人員が増えても十分な援助、支援や保育が難しいと感じるから」や「現場に入らない人に実際に改善しなければならない問題がわかるはずがない」など39の回答を得ることができました。
<2024年(n=43):自由回答・一部抜粋>
・35歳:園によって格差が大きいため。
・42歳:もっと大きく変えてくれないと実感することはないと思う。
・35歳:配慮の必要な子どもが増加していて人員が増えても十分な援助、支援や保育が難しいと感じるから。
・30歳:現場に入らない人に実際に改善しなければならない問題がわかるはずがない。
・59歳:肝心な3歳児の職員配置人数が改善されてない。もっと現場を見て、声を聞いて欲しい。
・25歳:配置基準が変わったとしても、そもそもの保育者数が足りないから。
・46歳:他の年齢の配置基準も変えて欲しい。1歳児6人に1人、0歳児3人に1人はきつい。
<2023年(n=38):自由回答・一部抜粋>
・40歳:保育士になりたいという人が少ないから。
・36歳:処遇が改善されなければ、やめる人は変わらない。負担は変わらないから。
・32歳:政策が出たとしても、実際の現場でそれが実施されることは少ないので期待できない。処遇もよくなると年々言われているが、実際働いている身で実感はない。
・25歳:子ども中心に考えていることは大切だが、そのために大人の数が足りていないこと、不適切保育も問題になっていることなど、先に改善すべきところがあると思う。
・27歳:園ごとに行事や製作物、出退勤時間などが異なり、経営者や園長のやり方、労働時間など、もっと深い所まで国の指示が入らないと何の意味もない。
・29歳:今回でできるなら、今までも出来てると思うから。もっと現場の声を聞いてほしい。
・34歳:園長主任が古い考えから変わらないため。
■まとめ
今回は、現役保育士104名を対象に、【2024年版】保育士配置基準見直しと保育の質向上に関する定点調査を実施しました。
まず、現役保育士の62.6%が、現在の配置数または処遇が不十分だと回答していますが、2023年に比べて16.6ポイント減少していることが分かりました。また、保育士の配置基準見直しに対して、63.4%(2023年比3.1ポイント増)が期待を寄せていますが、配置基準見直しの効果を実感している人は34.6%に留まっています。さらに、約6割が、保育士の配置基準見直しにより「保育の質が向上する」と回答しており、配置基準の見直しにより改善される業務については、2023年と同じく「精神的な負担が減る」が最多となりました。
今回の調査では、保育士の配置基準見直しに対する保育現場の捉え方の変化が明らかになりました。配置基準見直しに期待の声が寄せられる一方で、その効果を実感できていない保育士も存在します。効果を感じていない保育士からは、人手不足のため人員が増えないという課題が指摘されていますが、「配慮の必要な子どもが増加していて人員が増えても十分な援助、支援や保育が難しいと感じるから」という回答のように、保育上の複雑性が変化する現代において、量的アプローチだけでは不十分であることが示されています。政府は76年ぶりに4~5歳児の配置基準を見直しましたが、「もっと現場を見て、声を聞いて欲しい」「現場に入らない人に実際に改善しなければならない問題がわかるはずがない」という回答の通り、現場とのギャップはまだまだ埋まっていません。保育の質向上を実現するためには、改めて保育現場が抱える課題の本質に目を向ける必要がありますが、それと併せて保育人材の確保が大きなウェイトを占めるのも事実です。保育士の人手不足解消に向け、段階的な施策ではなく、スピーディかつ抜本的な保育士の処遇改善が求められているのではないでしょうか。
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