【保育士から見る出生率低下問題】 約7割の保育士が、働く中で「出生率の低下」を実感 低下の原因として、67.9%が「育児に対する経済的負担の懸念」を選定
〜出生率向上のために保育園・保育士の立場からできることとは〜
株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野 吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)が運営する子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」は、勤続年数3年以上の常勤保育士106名を対象に、出生率に関する保育士の意識調査を実施しましたので、お知らせいたします。
■調査サマリー
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■調査概要
調査名称:出生率に関する保育士の意識調査
調査方法:IDEATECHが提供するリサーチPR「リサピー®︎」の企画によるインターネット調査
調査期間:2024年7月22日〜同年7月24日
有効回答:勤続年数3年以上の常勤保育士106名
※構成比は小数点以下第2位を四捨五入しているため、合計しても必ずしも100とはなりません。
≪利用条件≫
1 情報の出典元として「子ねくとラボ」の名前を明記してください。
2 ウェブサイトで使用する場合は、出典元として、下記リンクを設置してください。
■約7割が、働いている中で「出生率の低下を実感することがある」と回答
「Q1.あなたは働いている中で、出生率の低下を実感することがありますか。」(n=106)と質問したところ、「かなりある」が29.2%、「ややある」が40.6%という回答となりました。
・かなりある:29.2%
・ややある:40.6%
・あまりない:22.6%
・全くない:5.7%
・わからない/答えられない:1.9%
■保育士が考える出生率低下の原因、「育児に対する経済的負担の懸念」が67.9%で最多
「Q2.あなたが考える、出生率低下の原因を教えてください。(上位3つまで)」(n=106)と質問したところ、「育児に対する経済的負担の懸念」が67.9%、「育児に対する精神的負担の懸念」が35.8%、「未婚率の上昇」が33.0%という回答となりました。
・育児に対する経済的負担の懸念:67.9%
・育児に対する精神的負担の懸念:35.8%
・未婚率の上昇:33.0%
・夫婦共働きであることによる時間不足:29.2%
・晩婚化の進行:28.3%
・勤め先における福利厚生の不整備:19.8%
・勤め先の支援・理解不足:17.9%
・行政の支援不足:16.0%
・その他:3.8%
―42歳:コロナ禍
―42歳:コロナ禍
―36歳:勤め先に対する精神的負担
・わからない/答えられない:2.8%
■「生き方が多種多様になり、自由を求める人が増えた」や「子育て支援の不足」などの理由も
Q2で「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q3.Q2で回答した以外に、出生率低下の原因として考えているものがあれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=103)と質問したところ、「生き方が多種多様になり、自由を求める人が増えた」や「子育て支援の不足」など76の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
・39歳:生き方が多種多様になり、自由を求める人が増えた。
・36歳:子育て支援の不足。
・47歳:不妊。
・60歳:仕事との両立が大変。
・57歳:育児休暇があっても、仕事復帰したら、まわりは、子育て中の人に対して冷たい理解がない。
・28歳:給料が低く子どもを育てられない。
・39歳:昔は夫婦共働きでなくても子育てが出来る経済状況だったが、今は共働きじゃないと育てられない経済状況になっていると思う。生活水準の向上。結婚=幸せというのが今では結婚以外の幸せも認められつつあるからじゃないか。
■約半数が、「『こども誰でも通園制度』や一時預かり保育事業などの充実が出生率に影響すると思う」と回答
「Q4.あなたは『こども誰でも通園制度』や一時預かり保育事業などの充実が、出生率に影響すると思いますか。」(n=106)と質問したところ、「非常にそう思う」が20.8%、「ややそう思う」が24.5%という回答となりました。
・非常にそう思う:20.8%
・ややそう思う:24.5%
・あまりそう思わない:28.3%
・全くそう思わない:22.6%
・わからない/答えられない:3.8%
■52.9%から、「保育士の立場として、出生率向上のために貢献できることがあると思う」と前向きな声
「Q5.あなたは、保育士の立場として、出生率向上のために貢献できることがあると思いますか。」(n=106)と質問したところ、「かなりあると思う」が16.1%、「ややあると思う」が36.8%という回答となりました。
・かなりあると思う:16.1%
・ややあると思う:36.8%
・ほぼない思う:31.1%
・全くないと思う:9.4%
・わからない/答えられない:6.6%
■保育士の立場として、出生率向上のために貢献できると思うこと、「保護者の相談に乗り、育児のストレス軽減を図る」が71.4%で最多
Q5で「かなりあると思う」「ややあると思う」と回答した方に、「Q6.保育士の立場として、出生率向上のために貢献できると思うことがあれば教えてください。(複数回答)」(n=56)と質問したところ、「保護者の相談に乗り、育児のストレス軽減を図る」が71.4%、「働く親のために、フレキシブルで多様な保育サービスを提供する」が42.9%、「保護者参加行事などを通して育児の楽しさを伝える」が41.1%という回答となりました。
・保護者の相談に乗り、育児のストレス軽減を図る:71.4%
・働く親のために、フレキシブルで多様な保育サービスを提供する:42.9%
・保護者参加行事などを通して育児の楽しさを伝える:41.1%
・保育者の質をさらに高め、保護者の信頼を深める:37.5%
・その他:1.8%
・わからない/答えられない:1.8%
■「子育てしやすい環境づくりに貢献する」や「保護者の悩みを聞く。障害児保育などの拡大」などの声も
Q6で「わからない/答えられない」以外を回答した方に、「Q7.Q6で回答した以外に、保育士の立場として出生率向上のために貢献できると思うことがあれば、自由に教えてください。(自由回答)」(n=55)と質問したところ、「子育てしやすい環境づくりに貢献する」や「保護者の悩みを聞く。障害児保育などの拡大」など34の回答を得ることができました。
<自由回答・一部抜粋>
・39歳:子育てしやすい環境づくりに貢献する。
・28歳:保護者の悩みを聞く。障害児保育などの拡大。
・40歳:孤育てにならないようサービスを提供。
・47歳:延長保育。
・30歳:SNSで子どもの素晴らしさを発信する。
・36歳:子どもとふれあう機会づくり。
・30歳:核家族が多い中、繋がりを作れる。
・50歳:育児に関するアドバイスを丁寧におこなう。
■保育施設として、出生率向上のために貢献できると思うこと、「安心して預けられる職員体制」が61.3%で最多
「Q8.保育施設として、出生率向上のために貢献できると思うことがあれば教えてください。(複数回答)」(n=106)と質問したところ、「安心して預けられる職員体制」が61.3%、「保育ニーズに合わせた発達支援」が34.0%、「育児相談の場の提供」が31.1%という回答となりました。
・安心して預けられる職員体制:61.3%
・保育ニーズに合わせた発達支援:34.0%
・育児相談の場の提供:31.1%
・保育内容の充実:28.3%
・保育時間の更なる延長:26.4%
・毎日の給食提供:26.4%
・保護者支援プログラムの実施:20.8%
・幼保小接続の強化:12.3%
・その他:0.9%
・特にない:17.0%
・わからない/答えられない:2.8%
■55.8%が、「今後出生率が低下し続けた場合、保育士として自分の仕事に影響があると思う」と回答
「Q9.今後出生率が低下し続けた場合、保育士としてのあなたの仕事に悪い影響があると思いますか。」(n=106)と質問したところ、「非常にそう思う」が20.9%、「ややそう思う」が34.9%という回答となりました。
・非常にそう思う:20.9%
・ややそう思う:34.9%
・あまりそう思わない:31.1%
・全くそう思わない:7.5%
・わからない/答えられない:5.7%
■まとめ
今回は、勤続年数3年以上の常勤保育士106名を対象に、出生率に関する保育士の意識調査を実施しました。
まず、67.9%の保育士が「出生率の低下を実感している」と回答し、その主な原因として「育児に対する経済的負担の懸念」(67.9%)、「育児に対する精神的負担の懸念」(35.8%)、「未婚率の上昇」(33.0%)が挙げられました。また、約半数の保育士が「こども誰でも通園制度」や一時預かり保育事業の充実が出生率向上に影響すると考えており、52.9%の保育士から、「保育士として出生率向上に貢献できることがある」と前向きな声が聞かれました。具体的に貢献できることとして、「保護者の相談に乗り、育児のストレス軽減を図る」が71.4%で最も多く、さらに、保育施設として出生率向上に貢献できることとしては、「安心して預けられる職員体制」が61.3%で最多となりました。
今回の調査では、乳幼児やその保護者と常日頃から職業として接している保育士の、出生率の低下に対する意識が明らかになりました。多くの保育士が出生率低下の現状を認識し、その主な要因として経済的・精神的負担を挙げています。同時に、保育士自身の役割を通じて出生率向上に貢献できると前向きな意見も多く、特に保護者の相談対応や安心できる保育環境の提供を重要視しています。これらの結果は、保育士が単なる保育サービスや子育て支援の提供者としてだけでなく、少子化対策においても重要な役割を担う可能性を改めて示唆したと言えるでしょう。少子化を止めるのは一筋縄には行かないことは、これまでの国の取り組み結果を見れば一目瞭然です。それは、少子化の根本的な原因や、育児中またはこれから子どもを授かろうとしている当事者が抱える課題を見誤っている可能性もあるかもしれません。今回の調査の通り、第一線で「育児」を見て、それを支える保育士の声は、社会が抱える大きな課題の突破口になるのではないでしょうか。
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