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【令和6年4月|待機児童数2,567人】地域格差が及ぼす保育・教育環境への影響、多様な家庭と保育ニーズに応える仕組み

2024.10.29

ニュースリリース

〜明日香、待機児童数発表を受け「見解」を発表〜

 子どもと未来、そしてすべての人がConnect(繋がり、結びつき)する保育研究プロジェクト「子ねくとラボ(https://konnect-labo.jp/)」を運営する株式会社明日香(本社:東京都文京区、代表取締役:萩野吉俗、https://www.g-asuka.co.jp/index.htm)は、内閣府子ども家庭庁が発表した「令和6年4月時点|待機児童数(※1)」を受け、見解レポートを公開いたしましたので、お知らせいたします。

■「令和6年4月時点|待機児童数は2,567人」の発表を受けて|教育環境における地域格差に懸念

令和6年8月に発表された今年4月時点での全国待機児童数(※1)は、前年から113人減少し、過去最少の2,567人となりました。ピーク時に比べると大幅に改善されましたが、直近3年間における減少率には大きな変化が見られず、これは保育施設数の増加が縮小していることが主な要因です。特に、認定こども園は増加を続ける一方で、保育所の数は令和4年度から2年連続で減少しており、全体の利用定員数も過去10年間で初めて前年度比でマイナスとなっています。この背景には、保育所の”認定こども園化”といった要因もありますが、少子化による保育利用者の減少といった深刻な原因もあります。これが施設の統廃合などを引き起こし、施設数の増加を足止めしています。その証拠に定員充足率は全国的に88.8%(前年は89.1%)と逓減傾向が続いています。しかし、この充足率を地域別に見ると、都心部においては91.6%(前年横ばい)で、全国平均を上回って減少率も緩やかです。

一方、過疎地域では減少幅が大きく76.2%(前年77.5%)と下がり続けています。これは保育環境の地域格差が広がっていると言えます。多くの自治体がSDGsの達成を目指しており、SDGs目標4には「誰もが平等に受けられる教育機会」が掲げられていますが、地方創生の実現に向けて人口数を維持するためには、子どもたちの保育・教育環境の整備は欠かせません。しかし、過疎地域の現状としては、保育施設の減少に伴い利用者側の多様な保育ニーズを満たせない場面が生まれ、人口流出の加速に繋がって地方創生の実現をより困難にしていると言えるでしょう。また、この悪い流れは保育利用者の減少だけでなく、保育施設で働く保育者の労働環境にも影響を及ぼします。単純に考えて、施設が減ればその分の就労機会が失われます。就労機会を求めよりよい環境を目指し、それが周辺地域や保育施設数の多い都心部ということであれば、保育に携わる人口もそちらに流出してしまうでしょう。現に、隣接地域にも拘らず公定価格における地域区分の違いから雇用条件や給与面に差が生まれ、保育者の人材確保に影響を及ぼしているといった状況が存在します。そしてその人材確保の課題は、巡り巡って待機児童の解消の妨げにも繋がります。こども家庭庁は、いまだに待機児童が解消されていない地域の理由として、予想を超える申込数があったことを挙げていますが、それに続くのが、「保育者の人手不足」です。人材を確保できなかったために認可基準を満たせず定員を減らさざるを得なかった園などもあり、待機児童解消のための”受け皿整備”を妨げています。

”都心部の一極集中”については様々な視点から賛否が分かれます。それ自体の言及はここでは避けますが、こども家庭庁の掲げる「こどもまんなか社会」の実現という側面においては、「地域格差=保育教育格差」ということは避けなければいけません。全ての子どもたちが平等に高い質の保育や教育を受けられるためには、未だに多くの課題が立ちはだかっています。

■多様な家庭を支える「こども園」

保育所が減少傾向にある一方、認定こども園が増加していることについて先述しました。この背景には、保育所や幼稚園の”こども園化”がありますが、保育所と認定こども園の主な違いとして、保育所が2号および3号認定の子どもが利用対象となるのに対し、認定こども園は1号から3号認定までの子どもが対象となります。つまり、親の就労状況に関わらず利用できるのが認定こども園であり、「保育の必要性」が条件となる保育所に比べ、より多様な家庭を受け入れて支援することが可能となります。これはつまり、事業者側の観点からすれば、利用者を広く獲得できるという経営面でのプラスとなり、そこで働く保育者にとっても様々なメリットが生まれます。しかし、ここでも人材確保の課題が存在します。保育所には保育士資格、幼稚園には幼稚園教諭免許が必須ですが、認定こども園の職員は「保育教諭」と称され、両方の資格・免許状が必要となります。いずれかの資格しか保持していない者が認定こども園で就労する場合、もう片方の資格を取得する必要があり、これが人材確保のハードルとなっていました。これに対し国は、取得に必要な単位数を軽減する特例措置を設け、さらにその期間を再々延長することで対応しています(※2)。

実際に、保育士または幼稚園教諭115名を対象に実施した調査(※3)では、勤務先が廃園になった場合のキャリア選択として、3割以上の方が、「認定こども園に転職する」と回答しています。さらに、今後のキャリアにおいて、新たに獲得したいスキルや知識については、「特別支援教育」「子育て支援に関する知識」「外国語教育」がトップ3として挙げられ、キャリアの継続に関して不安を感じている保育士や幼稚園教諭の実態が伺えます。

少子化によって利用者が減少する一方、共働き世帯の増加や家庭環境の多様化に伴い、保育ニーズの多様さや複雑さも拡がり続けることが今後も想定されます。それらを満たして”選ばれる”ために、保育施設側は存続をかけたチャレンジが今求められています。しかしながらそもそも保育所・保育施設とは、子どもの最善の利益を考慮しその福祉を積極的に増進することに最もふさわしい場所でなければなりません。そういった環境に身を置く保育者が保育の質向上に専念し実践できるからこそ、子どものウェルビーイング実現に繋がり、利用者から「選ばれる」という好循環も生まれるわけです。

そういった意味でも、保育者の人材確保は極めて重要な課題で、そのための待遇改善は確実かつ迅速に実現させなければなりません。同調査の中でも、現在の社会課題を踏まえて、保育・教育の質を向上させるために重要だと考える取り組みについて保育士/幼稚園教諭に伺うと、6割以上から「保育者の待遇改善」が挙げられました。

保育利用者数の頭打ちを示す「2025年問題」がいよいよ目の前に迫っています。今回発表された全体の利用定員数減少は、この不気味な問題が引き起こす弊害の兆候なのかもしれません。現在の教育においては、子どもたちの「生きる力」を育むことが大きなテーマとなっています。「生きる力」とは、先行き不透明で不確かな社会状況の中で、どうすれば自らの生活を豊かにできるかを考えチャレンジすることを指しています。すなわち、今まさに保育・教育に携わるすべての大人に必要な力であると言えます。この問題の行方を引き続き注視していく必要があります。



■レポート執筆|「子ねくとラボ」所長|末廣剛プロフィール

末廣剛(すえひろつよし)

子ねくとラボ 所長

選ばれる園づくりコンサルタント

AdvancedMarketer(公益社団法人日本マーケティング協会公認)心理カウンセラー

<経歴>

 立命館⼤学卒業後、渡英しサブカルチャー/エンタメビジネスを研究。現地の児童支援施設等にてイベント企画・運営を行い、自身もパフォーマーとしても活動。その後、広告代理店等の勤務を経て、保育業界に。人材コーディネーター、⼈事・採⽤、新規園開設、広報、教育研修など、保育・子育て支援事業における多岐分野に携わり、⾯接・⾯談を⾏った保育⼠数は新卒から園長クラスまで延べ1,200⼈以上。

 保育所運営における広報戦略と組織構築の重要性を強調。「子どもファースト」をモットーに、保育士が輝き続けられる環境を構築するため活動中。プライベートにおいても育児奮闘中。(※自治体主催セミナー、保育士等キャリアアップ研修講師、SDGsイベント等出演)

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