保育のコラム

サービス残業が多く、体力的にも精神的にも限界で、保育士を辞めたいと思っているのですがどう行動すべき?

2023/02/27

サービス残業が多くて「毎日帰宅が遅い」「休日はぐったり」など、体力的にも精神的にもきつい、と限界を感じて辞めたいと悩んでいる保育士は多いようです。

 

本記事では、保育士のサービス残業や持ち帰り業務の実態、なぜサービス残業が発生するのかと、サービス残業が原因で辞めたいと感じた時にどう行動すればよいかについて、詳しく解説して行きます。

ずっと保育士編集部

【記事監修】ずっと保育士編集部

「ずっと保育士」は、保育ひとすじ28年の株式会社明日香が運営する保育専門のキャリアサポートサービスです。結婚や出産、育児など、目まぐるしく変わるライフステージの中で、その時その時にぴったり合うお仕事を紹介したい。そして、保育の仕事でずっと輝き続けるあなたを応援したい、という想いで保育士の就職、転職、復職などのキャリア支援を行っています。また、「ずっと保育士」では保育士さんの疑問や悩みなどを少しでも解決すべくコラムを通した情報発信も積極的に行っています。

保育士が辞めたいと感じる原因の1つになっているサービス残業の実態

 

保育士の退職の主な原因のひとつに挙げられるのが、保育士の残業の多さ。

加えて、手当がつくのではなくサービス残業の実態があります。

東京都福祉保健局が発表した「東京都保育士実態調査」によると、保育士退職意向理由の第3位に「労働時間が長い」が上がっており、全体の約37.3%を占めています。

 

実態1:そもそもサービス残業がない日は少ない

 

そもそも、残業のない日はほとんどありません。

保育園業務は、毎日目まぐるしくて保育士は多忙です。

なぜ、そんなに忙しいのかといえば、実際に保育する時間以外に、やらなければいけない仕事がたくさんあるからです。

主に、明日の保育の準備や保育計画作りや園児の成長に合わせた保育指導計画、一人一人の成長の記録である児童表などの事務業務があります。保育室の清掃や道具の消毒・片付けなども重要な業務です。

園行事の準備や室内装飾工作などもあります。

こういった業務を時間内にこなすことが難しいためほぼ毎日残業となるのです。

また、時に指定された会議などが入ることもあります。

経営主体や園によっても異なりますが、残業手当がつかずサービス残業となってしまう現状が多いのです。

 

実態2:定時退勤どころか休憩時間もろくに取れない

 

定時退勤がなかなか難しい現状の中、休憩時間はどうでしょうか?

保育園にもよりますが、保育士の休憩時間に保護者への連絡帳記入や事務・行事準備・会議等明らかに業務の一環をこなさなければいけない事もあります。

園児の午睡中に休憩時間とする園が多いようですが、乳幼児突然死症候群(SIDS)や不慮の事故を未然に防ぐために、こまめにチェックが必須であること、交代で休憩する等の余裕を持った人員配置が難しいことから、ほとんど休憩を取れないケースが多くあります。

 

また、園児の給食時間に保育士が一緒に食事をとる、といった事もありますが、子ども達の食事指導やサポートと後片付けなどがあるため、自分での食事は当然手早すませるほかなく、ゆっくり食事どころではありません。

ましてや、トイレもままならないといった現状で膀胱炎になる保育士も多くいます。

 

実態3:持ち帰り業務がかなり多い

 

保育園によっては、残業をしないよう指導しているケースもあります。

しかし、業務時間内に事務の時間などが取れずに、どうしても仕事が残ってしまうため、業務を持ち帰っているケースがあるのも実情です。

 

また、サービス残業をしても終わらない、といった一人の保育士にかかる負担の多い園はサービス残業してさらに仕事を持ち帰って休日等に家でやっている場合も多いようです。

一般企業であれば残業手当や休日出勤手当等に該当するため、保育士の業務の持ち帰りが当たり前のように行われるのはよくない実態と言えます。

持ち帰り内容によっては、セキュリティ上も問題があります。

そのため、人員配置に余裕を持ち、交代で事務時間を確保し業務中にこなせるような取り組みをしている園もあります。

 

統計上では保育士の残業時間は月平均3〜4時間!保育士が残業した時間のほとんどがサービス残業となっている

 

実は、<参考資料1>によると、保育士の残業時間の月平均は4時間となっています。

つまり週に1時間程度です。

<参考資料1>

賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DB第1表 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口 (e-stat.go.jp)

 

しかし実際にはアンケート調査によれば、1日1~2時間残業している保育士が34.8%と全体の1/3以上、1時間以内が21.6%、2~3時間以内が19.6%とそれぞれ5人に1人くらいの割合です。

3~4時間以内、という方は9.3%。中には少数ですが、4~5時間、5時間以上といった方もいるようです。

 

残業は全くないという保育士はなんと5.9%、17人に1人くらいの割合でしかない、ということです。

 

<参考資料2>の調査では実際に残業手当としてつけられた時間しか計上されてないと言えます。

これだけの業務量をこなしても、正当な賃金が支払われていない現状があるのです。

 

<参考資料2>

https://hoiku-shigoto.com/report/archives/16240/

 

保育士がサービス残業で辞めたいと感じる主な理由

 

この現状を何とかしたいと思っていても、「昔からそうだったから」とか「人手不足だから」等の理由で頑張ってしまう状況の中で、保育士が辞めたいと感じるのはどんな理由でしょうか。

 

理由1:そもそも残業代が支払われないこと自体に疑問を感じるから

 

人は、頑張っていることに対して認めてもらいたい、頑張ったぶんだけ報酬が欲しいと思うのが必然です。

 

しかし、保育士は実際の保育時間以外でも業務量が多く時間がかかる職種にもかかわらず、その正当な賃金が支払われてない、という現状があります。

保育をしている時間が業務時間、それ以外は業務とみなされずサービス残業扱い、と言う園や、残業手当つけられないからタイムカードを切ってから残業、といった事が横行している園もあります。

したがって、これだけの残業をこなしてもサービス残業扱いになってしまうことに疑問を感じて辞めたいと思うようです。

 

理由2:休息時間が少ないため精神的にも体力的にもきついから

 

そもそも、昼食休憩もままならず、それ以外の休息時間はほぼ取れず、トイレすらなかなか行けないような状況を我慢すると体を壊しかねません。

精神的にも体力的にもきつくなってしまい、辞めたいと感じます。

 

理由3:ワークライフバランスが崩れているから

 

毎日残業して、休日も仕事を持ち帰って、となると、自分の時間がほぼ取れません。

平日の夜は当然のことながら、休日すら自分の事や家庭の事が出来ず、趣味やプライベートや家族との時間をとったり、ゆっくり休息したり、といった時間が取れずに、ワークライフバランスが崩れてしまうのです。

 

サービス残業が原因で保育士を辞めたいと思った時に取るべき行動

 

それでは、保育士が実際にサービス残業が原因で退職を考えた時、どのように行動していくのが良いでしょうか?実際に取るべき行動について解説します。

 

【1】上司に相談できる場合は、まずは体調やメンタルが限界であることを相談し、休職や転職を検討する

 

上司に相談できる状況である場合は、まずは相談しましょう。

自分が限界であることや、体やメンタルに響いていることを正直に伝えます。

 

保育園全体の問題として真剣に耳を傾け、業務改善に取り組んでくれる場合もあります。

しかし、改善にはかなりの時間と労力を費やし、一朝一夕とはいきません。

限界を感じているならば、一度休職をして現場を離れてゆっくり休養し、まずは体調を治すことが優先です。

今後の復職や転職などについて考えるのは、休養してからじっくり考えるのが良いでしょう。

 

【2】上司に相談できない場合は、メンタルクリニックで診断を受け、休職または転職をする

 

上司に相談しづらい、職場環境や人間関係があまり良くない、相談しても「みんなそうだから」「みんな我慢して頑張っている」などと言われてしまう場合は、直接メンタルクリニックを受診しましょう。

診断を受け、自分に限界が来ているようであれば、まずは休職してゆっくり療養するか、または転職を検討すると良いでしょう。

診断書等を発行してもらうと、その後の職場への相談がスムーズになります。

 

サービス残業が原因で保育士を辞めたいと思った時は、体力や精神力にまだ余力のある段階で行動を起こすことが大切!

 

休職を申し出るにしても、退職や転職を検討するにしても、行動を起こすにはパワーが必要です。

かなりの体力や気力が必要なので、ほとんどの場合「サービス残業で疲弊している。」というこの現状を打破したくても、日々の多忙な業務だけで精一杯で、なかなか次の1歩に踏み出せない現状の保育士は多くいます。

 

そのため、メンタルや体を壊してしまう前に行動を起こすことが大切です。

 

保育士が辞める一般的なフロー

 

保育士が辞める時の一般的な流れについて解説します。

まずは退職の意思を伝えることから始まります。

退職の意思は、法的には退職希望日の14日前までに申告をするよう定められていますが、一般的には1ヶ月程度前に申告するのが良いとされています。

 

また、保育園の場合は担任等の人員配置に影響があるため、年度末退職を視野に入れて年末までに(12月頃)伝えるケースもあります。

まずは直属の上司に退職意思を伝え、その後園長に伝えます。

園長に伝えた後に、保育園側から退職に関する書類等が発行されますので提出します。

退職日には保険証や貸与品の返却を行い退職となります。

一緒に働く同僚などに伝えるタイミング等は、保育園側の指示に従うようにしましょう。

職場の環境などに配慮して情報の解禁日を設ける保育園もあります。

 

また、引き継ぎについても、後任者が困ることのないようにできる限りしっかりと行いましょう。最後までしっかり責任を持つことで、あなた自身の今後へ繋がります。

子どもたちや保護者へ退職を伝えるかどうかも保育園の方針によります。

直接自分から伝えたいという思いがあったとしても、今後の影響を考えて退職後にプリントなどで伝えるのみにするなど保育園側にも方針があります。

周囲への混乱を招かないためにも、退職についてどのように伝えるかは園長や上司に確認してから進めるようにしましょう。

 

サービス残業は当たり前ではない!我慢せずに体調面や精神面を尊重して行動しよう!

 

9割以上の保育士がサービス残業を余儀なくされていて、多くの保育士が悩んでいるという現状です。

「昔からそうだったから。」「みんなそうだから」と我慢する必要はありません。

残念ながら、当たり前のようにそれをさせる経営者もいますが、サービス残業は当たり前ではありません。

人員配置や業務効率化の工夫で、サービス残業や持ち帰り仕事をさせないよう工夫している園はあります。

無理をしてメンタルや体調を壊しては取り返しがつきません。我慢せずに、自分の体調面や精神面を尊重して行動しましょう。

 

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