保育士等キャリアアップ研修とは?処遇改善によって給料はどう変わるの?
2024/03/23
あなたは、「保育士等キャリアアップ研修」についてご存知ですか?
保育士の給料アップのための制度「処遇改善加算手当」を受けるには、2023年度(令和5年度)から、保育士等キャリアアップ研修の受講が必須となりました。
「キャリアアップ研修の仕組みってどうなっているの?」
「研修を受講すると給料がどのように変わるの?」
といったように、研修内容や処遇改善などについてイマイチわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、保育士等キャリアアップ研修についての具体的な内容や、処遇改善によって給料がどう変わるのか、詳しく解説していきます。
あなたの給料に直接かかわる大事な内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
保育士等キャリアアップ研修とは?
保育士等のキャリアアップ研修とは、保育士の「処遇改善」と「専門性向上」を目的とした処遇改善加算制度のひとつです。
処遇改善加算制度とは、保育士の給料アップや、労働環境の改善のために国が策定した制度のこと。
「処遇改善加算Ⅰ」「処遇改善加算Ⅱ」「処遇改善加算Ⅲ」の3つがあり、保育士等キャリアアップ研修は、「処遇改善加算Ⅱ」の中に入ります。
一定の経験年数を積んだ保育士が対象で、必要な研修分野や、研修の数に応じた役職に就くことで給料アップにつなげられます。
以前の保育園の役職には、「園長」と「主任保育士」の2つしかありませんでしたが、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という新しい役職が設立されたことで、中堅・若手保育士でもキャリアアップを目指せるようになりました。
保育士等キャリアアップ研修は、以下の7つの研修分野に分かれており、新たな役職にキャリアアップするには、7つの中から必要な研修分野を修了しなければなりません。
➀乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育・アレルギー対応
⑤保健衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
⑦マネジメント
詳しくは、子ども家庭庁「保育士等キャリアアップ研修の実施について」をご覧ください。
現在適用されている研修要件
副主任保育士・専門リーダー・中核リーダー等は、2023年度(令和5年度)から2026年度(令和8年度)までの間に、毎年1分野(15時間以上)ずつ段階的に研修を修了させ、令和8年度には4分野(60時間以上)を完全に修了しなければなりません。
一方で、職務分野別リーダー・若手リーダーに関しては、2024年度(令和6年度)から適用され、初年度から1分野(15時間以上)の研修修了が要件となります。
現在適用されている研修要件を下記の「表1」にまとめました。
表1:保育士等キャリアアップ研修要件の主な内容
役職
研修修了要件
適用開始時期
完全実施年度
副主任保育士
専門リーダー
中核リーダー等
4分野
(60時間以上)
2023年度(令和5年度)から段階的に
2026年度
(令和8年度)
職務分野別リーダー
若手リーダー
担当する1分野以上
(15時間以上)
2024年度(令和6年度)から
2024年度
(令和6年度)
参考:子ども家庭庁「施設型給付費等に係る処遇改善等加算IIに係る研修修了要件について」
保育士等キャリアアップ研修の種類と内容
保育士等キャリアアップ研修は、「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の3種類の研修に分かれています。
いずれの場合も、保育士としての専門知識にくわえて、指導力や実践力が必要とされる内容となっており、1分野につき15時間以上の研修とされています。
以下より詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
専門分野別研修
専門分野別研修は、「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食育・アレルギー対応」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」の6つの専門分野に分かれています。
研修では、先進的な知識や技術を学ぶことができるので、日常の保育現場で発生する問題や課題解決に大きく役立つでしょう。
保育現場において、各専門分野に関してのリーダー的な役割を担う者(担うことが見込まれる者を含む)が研修を受ける対象者とされています。
以下より、それぞれの専門分野について詳しく見ていきます。
乳児保育
乳児(主に0〜3歳未満児)への適切な関わり方や、発達に応じた保育内容など、乳児に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・乳児保育の意義
・乳児保育の環境
・乳児への適切な関わり
・乳児の発達に応じた保育内容
・乳児保育の指導計画、記録および評価
幼児教育
幼児(主に3歳以上児)の教育に適した環境や、発達に応じた保育内容など、幼児に関する教育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・幼児教育の意義
・幼児教育の環境
・幼児の発達に応じた保育内容
・幼児教育の指導計画、記録および評価
・小学校との接続
障害児保育
障害児に適した環境や発達援助など、障害児に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・障害の理解
・障害児保育の環境
・障害児の発達の援助
・家庭及び関係機関との連携
・障害児保育の指導計画、記録および評価
食育・アレルギー対応
栄養に関する知識や、アレルギー疾患の理解など、食育やアレルギー対応に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・栄養に関する基礎知識
・食育計画の作成と活用
・アレルギー疾患の理解
・保育所における食事の提供ガイドライン
・保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
保健衛生・安全対策
保育施設における感染症対策や、園児の事故防止など、保健衛生や安全対策に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保健計画の作成と活用
・事故防止及び健康安全管理
・保育所における感染症対策ガイドライン
・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
・教育・保育施設等における事故防止および事故発生時の対応のためのガイドライン
保護者支援・子育て支援
保護者に対する相談援助や、虐待予防など、保護者支援や子育て支援に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保護者支援・子育て支援の意義
・保護者に対する相談援助
・地域における子育て支援
・虐待予防
・関係機関との連携、地域資源の活用
マネジメント研修
マネジメント研修は、主任保育士を補佐して、円滑な保育施設の運営を行うための研修です。
この研修は、副主任保育士に就任するための必須の研修分野ですので頭に入れておきましょう。
主任保育士の下で、ミドルリーダーとしての役割を理解し、園の円滑な運営と保育の質を高めるため、マネジメント能力・リーダーシップ能力を身に付けてもらうことがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・マネジメントの理解
・リーダーシップ
・組織目標の設定
・人材育成
・働きやすい環境づくり
保育実践研修
保育実践研修は、保育に関する基本について学ぶ研修です。
子どもとのやり取りの仕方をはじめ、さまざまな遊びを学ぶので、実際の保育の現場で役立てることができるでしょう。
子どもに対する理解を深め、適切な環境や遊びを提供できる保育士を育成することが研修のねらいとなります。
ちなみに、現場経験が少ない保育士や、ブランクのある保育士が研修の対象者となりますので、処遇改善加算Ⅱの要件には入っていません。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保育における環境構成
・子どもとの関わり方
・身体を使った遊び
・言葉・音楽を使った遊び
・物を使った遊び
新役職にキャリアアップするための条件
それでは、保育士の3つの新役職「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」に就くためにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、新役職にキャリアアップするための条件をお伝えしていきます。
前提として、保育士等キャリアアップ研修を受けることができるのは、ある程度の経験を積んだ保育士で、就任するには一定の条件をクリアする必要があります。
下記の「表2」に詳細をまとめましたので参考にしてみてください。
表2:新役職にキャリアアップするための条件
役職
キャリアアップの条件
副主任保育士
・経験年数がおおむね7年以上
・職務分野別リーダーを経験
・マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了
・副主任保育士としての発令
専門リーダー
・経験年数がおおむね7年以上
・職務分野別リーダーを経験
・4つ以上の分野の研修を修了
・専門リーダーとしての発令
職務分野別リーダー
・経験年数がおおむね3年以上
・担当する職務分野(専門分野別研修6分野)の研修を修了
・修了した研修分野に係る職務分野別リーダーとしての発令
保育士等キャリアップ研修修了によって給料はどう変わるのか
では、保育士等キャリアアップ研修を修了することによって給料はどう変わるのでしょうか。
ここでは、研修を修了し、それぞれの役職に就いた場合の給料の加算額を解説していきます。
ただし、各園で役職の人数枠があるため、研修を修了した全員が必ずしも役職に就けるわけではありません。
くわえて、役職に就いたからといって満額支給されるとは限らないことも注意しておきましょう。
職務分野別リーダーの場合
職務分野別リーダーの場合、対象者すべてに月額5千円以上が支給されます。
手当が加算される対象者は、園長と主任保育士を除いた一般保育士の数の1/5までとなり、標準規模の園で3人ほどです。
専門リーダー・副主任保育士の場合
専門リーダー・副主任保育士の場合、月額最大4万円が支給されます。
ただし、月額4万円の満額支給が確定しているのは1名のみで、残りの役職への配分は園側に任せられています(5千円~4万円未満)。
手当を加算される対象者は、園長と主任保育士を除いた一般保育士の数の1/3までとなり、標準規模の園で5人ほどです。
【5STEP】保育士等キャリアアップ研修を受講・修了する流れ
ここからは、保育士等キャリアアップ研修を受講・修了する流れを5つのステップに分けて見ていきましょう。
これから研修を受けようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1:実施機関に申し込む
保育士等キャリアアップ研修は、各都道府県や指定研修機関の公式サイトから申し込みができます。
研修の申し込みは、役職の人数が決まっているため、希望者全員が研修を受けられるとは限らないので注意してください。
個人で申し込む場合は、研修者情報を園が取りまとめる必要があるので、必ず勤める園に相談して許可をもらうようにしましょう。
STEP2:受講者の決定を待つ
実施機関に申し込んだら、受講者の決定を待ちます。
他の園などからも含めて、定員を超える申し込みがあった場合、選考になる可能性があることも頭に入れておきましょう。
受講者が決定したら、「受講決定通知」が送られてきます。
STEP3:保育士等キャリアアップ研修を受講する
保育士等キャリアアップ研修を実際に受講します。
その際、実施機関によっては研修タイプが以下のように異なる場合がありますので確認するようにしましょう。
【集合型研修】
参加者がリアル会場に直接足を運んで学ぶ従来の研修タイプです。
【オンライン研修】
Zoomなどのオンライン会議システムを使い、リアルタイムで受講します。
【eラーニング研修】
インターネットを使った学習システムで、録画された講義ビデオなどを使って勉強します。
ちなみに、研修に遅刻をした場合は、受付ができなかったり、研修が修了できなかったりする可能性があります。
万が一、遅刻しそうな場合は、必ず実施機関に連絡を入れるようにしてください。
そのため、集合型研修の場合は、あらかじめ交通機関の確認や、早めの行動を心がけ、インターネットを使った研修の場合は、パソコンの動作確認などを事前に済ませておきましょう。
STEP4:レポートを提出する
受講が終わったら、課題のレポートを実施機関に提出します。
ちなみに、15時間分の研修内容をまとめるのは容易ではありません。
要点を整理しやすいように、大事な部分はメモを取ったり、目立つように印を付けたりすることをオススメします。
STEP5:修了証を受け取る
提出した課題のレポートが認められると、研修修了者として登録されて、修了証が交付されます。
保育士等キャリアアップ研修を受講するメリット
役職に就くことで、給料アップの面ばかり注目されがちですが、そればかりではありません。
保育士の処遇改善のほかに「職員の資質・専門性の向上」を目的としているため、研修内容がとても充実しています。
ここでは、保育士等キャリアアップ研修を受講するメリットを詳しく紹介していきます。
<1>専門知識を深められる
まず、保育に関する専門知識を深めることができます。
「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食事・アレルギー対応」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」「マネジメント」「保育実践」の研修を修了することで、近年の専門的な対応が求められている保育現場に貢献することができるでしょう。
研修で学んだ専門知識を実際の現場にアウトプットすれば、自分自身の理解を定着させるだけでなく、他の職員にも共有されて、子どもたちや保護者の幸せにつながっていきます。
<2>キャリアを明確化できる
かつては、園長と主任保育士のみだった保育士のキャリア。
経験年数と受講する研修分野に応じて新しい役職に就けるようになりました。
若手・中堅クラスの保育士にとって、保育士としてのキャリアを明確化できるようになったといえるでしょう。
<3>転職時にアピールポイントになる
保育士等キャリアアップ研修を修了することで、転職時にアピールポイントになります。
研修を修了した効力は、退職と同時に消滅するものではありません。
そのため、期限はなく、転職の際に自分の実績や強みとして活かすことができます。
<4>研修費用の負担が少ない
研修会場までの交通費や、インターネットを使った受講の通信費などを除き、受講料やテキスト代などを無料とする場合や、研修費用の負担が少なく受講できる可能性があります。
ただし、研修の実施機関によっては、受講料やテキスト代が必要な場合がありますので、事前によく確認するようにしましょう。
<5>修了証は日本全国で使える
保育士等キャリアアップ研修の修了証は、研修を受講した都道府県の保育施設に限らず、全国どこでも使うことができます。
そのため、引っ越して県外へ転職する際にも広く活用することができます。
保育士等キャリアアップ研修を修了して処遇改善を目指そう!
いかがだったでしょうか?
保育士等キャリアアップ研修は、若手や中堅保育士のキャリア形成に欠かせない制度でした。
しかも、研修を修了すれば、期限もなく、住む場所を変えてもキャリアを継続しやすくなります。
研修を修了することで、保育士としての専門性をアップできるだけでなく、処遇改善で給料アップを目指せるので、チャンスがあれば積極的に研修に参加することをオススメします!
カテゴリ
保育士キャリア
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あなたは、「保育士等キャリアアップ研修」についてご存知ですか?
保育士の給料アップのための制度「処遇改善加算手当」を受けるには、2023年度(令和5年度)から、保育士等キャリアアップ研修の受講が必須となりました。
「キャリアアップ研修の仕組みってどうなっているの?」
「研修を受講すると給料がどのように変わるの?」
といったように、研修内容や処遇改善などについてイマイチわからない方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、保育士等キャリアアップ研修についての具体的な内容や、処遇改善によって給料がどう変わるのか、詳しく解説していきます。
あなたの給料に直接かかわる大事な内容ですので、ぜひ最後までお付き合いください。
保育士等キャリアアップ研修とは?
保育士等のキャリアアップ研修とは、保育士の「処遇改善」と「専門性向上」を目的とした処遇改善加算制度のひとつです。
処遇改善加算制度とは、保育士の給料アップや、労働環境の改善のために国が策定した制度のこと。
「処遇改善加算Ⅰ」「処遇改善加算Ⅱ」「処遇改善加算Ⅲ」の3つがあり、保育士等キャリアアップ研修は、「処遇改善加算Ⅱ」の中に入ります。
一定の経験年数を積んだ保育士が対象で、必要な研修分野や、研修の数に応じた役職に就くことで給料アップにつなげられます。
以前の保育園の役職には、「園長」と「主任保育士」の2つしかありませんでしたが、「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」という新しい役職が設立されたことで、中堅・若手保育士でもキャリアアップを目指せるようになりました。
保育士等キャリアアップ研修は、以下の7つの研修分野に分かれており、新たな役職にキャリアアップするには、7つの中から必要な研修分野を修了しなければなりません。
➀乳児保育
②幼児教育
③障害児保育
④食育・アレルギー対応
⑤保健衛生・安全対策
⑥保護者支援・子育て支援
⑦マネジメント
詳しくは、子ども家庭庁「保育士等キャリアアップ研修の実施について」をご覧ください。
現在適用されている研修要件
副主任保育士・専門リーダー・中核リーダー等は、2023年度(令和5年度)から2026年度(令和8年度)までの間に、毎年1分野(15時間以上)ずつ段階的に研修を修了させ、令和8年度には4分野(60時間以上)を完全に修了しなければなりません。
一方で、職務分野別リーダー・若手リーダーに関しては、2024年度(令和6年度)から適用され、初年度から1分野(15時間以上)の研修修了が要件となります。
現在適用されている研修要件を下記の「表1」にまとめました。
表1:保育士等キャリアアップ研修要件の主な内容
役職 |
研修修了要件 |
適用開始時期 |
完全実施年度 |
副主任保育士 専門リーダー 中核リーダー等 |
4分野 (60時間以上) |
2023年度(令和5年度)から段階的に |
2026年度 (令和8年度) |
職務分野別リーダー 若手リーダー |
担当する1分野以上 (15時間以上) |
2024年度(令和6年度)から |
2024年度 (令和6年度) |
参考:子ども家庭庁「施設型給付費等に係る処遇改善等加算IIに係る研修修了要件について」
保育士等キャリアアップ研修の種類と内容
保育士等キャリアアップ研修は、「専門分野別研修」「マネジメント研修」「保育実践研修」の3種類の研修に分かれています。
いずれの場合も、保育士としての専門知識にくわえて、指導力や実践力が必要とされる内容となっており、1分野につき15時間以上の研修とされています。
以下より詳しく解説していきますので、ぜひご覧ください。
専門分野別研修
専門分野別研修は、「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食育・アレルギー対応」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」の6つの専門分野に分かれています。
研修では、先進的な知識や技術を学ぶことができるので、日常の保育現場で発生する問題や課題解決に大きく役立つでしょう。
保育現場において、各専門分野に関してのリーダー的な役割を担う者(担うことが見込まれる者を含む)が研修を受ける対象者とされています。
以下より、それぞれの専門分野について詳しく見ていきます。
乳児保育
乳児(主に0〜3歳未満児)への適切な関わり方や、発達に応じた保育内容など、乳児に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・乳児保育の意義
・乳児保育の環境
・乳児への適切な関わり
・乳児の発達に応じた保育内容
・乳児保育の指導計画、記録および評価
幼児教育
幼児(主に3歳以上児)の教育に適した環境や、発達に応じた保育内容など、幼児に関する教育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・幼児教育の意義
・幼児教育の環境
・幼児の発達に応じた保育内容
・幼児教育の指導計画、記録および評価
・小学校との接続
障害児保育
障害児に適した環境や発達援助など、障害児に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・障害の理解
・障害児保育の環境
・障害児の発達の援助
・家庭及び関係機関との連携
・障害児保育の指導計画、記録および評価
食育・アレルギー対応
栄養に関する知識や、アレルギー疾患の理解など、食育やアレルギー対応に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・栄養に関する基礎知識
・食育計画の作成と活用
・アレルギー疾患の理解
・保育所における食事の提供ガイドライン
・保育所におけるアレルギー対応ガイドライン
保健衛生・安全対策
保育施設における感染症対策や、園児の事故防止など、保健衛生や安全対策に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保健計画の作成と活用
・事故防止及び健康安全管理
・保育所における感染症対策ガイドライン
・保育の場において血液を介して感染する病気を防止するためのガイドライン
・教育・保育施設等における事故防止および事故発生時の対応のためのガイドライン
保護者支援・子育て支援
保護者に対する相談援助や、虐待予防など、保護者支援や子育て支援に関する保育の専門性を高めながら、他の保育士に対して適切な指導や、助言ができる能力を育成することがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保護者支援・子育て支援の意義
・保護者に対する相談援助
・地域における子育て支援
・虐待予防
・関係機関との連携、地域資源の活用
マネジメント研修
マネジメント研修は、主任保育士を補佐して、円滑な保育施設の運営を行うための研修です。
この研修は、副主任保育士に就任するための必須の研修分野ですので頭に入れておきましょう。
主任保育士の下で、ミドルリーダーとしての役割を理解し、園の円滑な運営と保育の質を高めるため、マネジメント能力・リーダーシップ能力を身に付けてもらうことがねらいです。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・マネジメントの理解
・リーダーシップ
・組織目標の設定
・人材育成
・働きやすい環境づくり
保育実践研修
保育実践研修は、保育に関する基本について学ぶ研修です。
子どもとのやり取りの仕方をはじめ、さまざまな遊びを学ぶので、実際の保育の現場で役立てることができるでしょう。
子どもに対する理解を深め、適切な環境や遊びを提供できる保育士を育成することが研修のねらいとなります。
ちなみに、現場経験が少ない保育士や、ブランクのある保育士が研修の対象者となりますので、処遇改善加算Ⅱの要件には入っていません。
具体的な研修内容は以下の通りです。
・保育における環境構成
・子どもとの関わり方
・身体を使った遊び
・言葉・音楽を使った遊び
・物を使った遊び
新役職にキャリアアップするための条件
それでは、保育士の3つの新役職「副主任保育士」「専門リーダー」「職務分野別リーダー」に就くためにはどうすればよいのでしょうか。
ここでは、新役職にキャリアアップするための条件をお伝えしていきます。
前提として、保育士等キャリアアップ研修を受けることができるのは、ある程度の経験を積んだ保育士で、就任するには一定の条件をクリアする必要があります。
下記の「表2」に詳細をまとめましたので参考にしてみてください。
表2:新役職にキャリアアップするための条件
役職 |
キャリアアップの条件 |
副主任保育士 |
・経験年数がおおむね7年以上 ・職務分野別リーダーを経験 ・マネジメント+3つ以上の分野の研修を修了 ・副主任保育士としての発令 |
専門リーダー |
・経験年数がおおむね7年以上 ・職務分野別リーダーを経験 ・4つ以上の分野の研修を修了 ・専門リーダーとしての発令 |
職務分野別リーダー |
・経験年数がおおむね3年以上 ・担当する職務分野(専門分野別研修6分野)の研修を修了 ・修了した研修分野に係る職務分野別リーダーとしての発令 |
保育士等キャリアップ研修修了によって給料はどう変わるのか
では、保育士等キャリアアップ研修を修了することによって給料はどう変わるのでしょうか。
ここでは、研修を修了し、それぞれの役職に就いた場合の給料の加算額を解説していきます。
ただし、各園で役職の人数枠があるため、研修を修了した全員が必ずしも役職に就けるわけではありません。
くわえて、役職に就いたからといって満額支給されるとは限らないことも注意しておきましょう。
職務分野別リーダーの場合
職務分野別リーダーの場合、対象者すべてに月額5千円以上が支給されます。
手当が加算される対象者は、園長と主任保育士を除いた一般保育士の数の1/5までとなり、標準規模の園で3人ほどです。
専門リーダー・副主任保育士の場合
専門リーダー・副主任保育士の場合、月額最大4万円が支給されます。
ただし、月額4万円の満額支給が確定しているのは1名のみで、残りの役職への配分は園側に任せられています(5千円~4万円未満)。
手当を加算される対象者は、園長と主任保育士を除いた一般保育士の数の1/3までとなり、標準規模の園で5人ほどです。
【5STEP】保育士等キャリアアップ研修を受講・修了する流れ
ここからは、保育士等キャリアアップ研修を受講・修了する流れを5つのステップに分けて見ていきましょう。
これから研修を受けようとしている方は、ぜひ参考にしてみてください。
STEP1:実施機関に申し込む
保育士等キャリアアップ研修は、各都道府県や指定研修機関の公式サイトから申し込みができます。
研修の申し込みは、役職の人数が決まっているため、希望者全員が研修を受けられるとは限らないので注意してください。
個人で申し込む場合は、研修者情報を園が取りまとめる必要があるので、必ず勤める園に相談して許可をもらうようにしましょう。
STEP2:受講者の決定を待つ
実施機関に申し込んだら、受講者の決定を待ちます。
他の園などからも含めて、定員を超える申し込みがあった場合、選考になる可能性があることも頭に入れておきましょう。
受講者が決定したら、「受講決定通知」が送られてきます。
STEP3:保育士等キャリアアップ研修を受講する
保育士等キャリアアップ研修を実際に受講します。
その際、実施機関によっては研修タイプが以下のように異なる場合がありますので確認するようにしましょう。
【集合型研修】
参加者がリアル会場に直接足を運んで学ぶ従来の研修タイプです。
【オンライン研修】
Zoomなどのオンライン会議システムを使い、リアルタイムで受講します。
【eラーニング研修】
インターネットを使った学習システムで、録画された講義ビデオなどを使って勉強します。
ちなみに、研修に遅刻をした場合は、受付ができなかったり、研修が修了できなかったりする可能性があります。
万が一、遅刻しそうな場合は、必ず実施機関に連絡を入れるようにしてください。
そのため、集合型研修の場合は、あらかじめ交通機関の確認や、早めの行動を心がけ、インターネットを使った研修の場合は、パソコンの動作確認などを事前に済ませておきましょう。
STEP4:レポートを提出する
受講が終わったら、課題のレポートを実施機関に提出します。
ちなみに、15時間分の研修内容をまとめるのは容易ではありません。
要点を整理しやすいように、大事な部分はメモを取ったり、目立つように印を付けたりすることをオススメします。
STEP5:修了証を受け取る
提出した課題のレポートが認められると、研修修了者として登録されて、修了証が交付されます。
保育士等キャリアアップ研修を受講するメリット
役職に就くことで、給料アップの面ばかり注目されがちですが、そればかりではありません。
保育士の処遇改善のほかに「職員の資質・専門性の向上」を目的としているため、研修内容がとても充実しています。
ここでは、保育士等キャリアアップ研修を受講するメリットを詳しく紹介していきます。
<1>専門知識を深められる
まず、保育に関する専門知識を深めることができます。
「乳児保育」「幼児教育」「障害児保育」「食事・アレルギー対応」「保健衛生・安全対策」「保護者支援・子育て支援」「マネジメント」「保育実践」の研修を修了することで、近年の専門的な対応が求められている保育現場に貢献することができるでしょう。
研修で学んだ専門知識を実際の現場にアウトプットすれば、自分自身の理解を定着させるだけでなく、他の職員にも共有されて、子どもたちや保護者の幸せにつながっていきます。
<2>キャリアを明確化できる
かつては、園長と主任保育士のみだった保育士のキャリア。
経験年数と受講する研修分野に応じて新しい役職に就けるようになりました。
若手・中堅クラスの保育士にとって、保育士としてのキャリアを明確化できるようになったといえるでしょう。
<3>転職時にアピールポイントになる
保育士等キャリアアップ研修を修了することで、転職時にアピールポイントになります。
研修を修了した効力は、退職と同時に消滅するものではありません。
そのため、期限はなく、転職の際に自分の実績や強みとして活かすことができます。
<4>研修費用の負担が少ない
研修会場までの交通費や、インターネットを使った受講の通信費などを除き、受講料やテキスト代などを無料とする場合や、研修費用の負担が少なく受講できる可能性があります。
ただし、研修の実施機関によっては、受講料やテキスト代が必要な場合がありますので、事前によく確認するようにしましょう。
<5>修了証は日本全国で使える
保育士等キャリアアップ研修の修了証は、研修を受講した都道府県の保育施設に限らず、全国どこでも使うことができます。
そのため、引っ越して県外へ転職する際にも広く活用することができます。
保育士等キャリアアップ研修を修了して処遇改善を目指そう!
いかがだったでしょうか?
保育士等キャリアアップ研修は、若手や中堅保育士のキャリア形成に欠かせない制度でした。
しかも、研修を修了すれば、期限もなく、住む場所を変えてもキャリアを継続しやすくなります。
研修を修了することで、保育士としての専門性をアップできるだけでなく、処遇改善で給料アップを目指せるので、チャンスがあれば積極的に研修に参加することをオススメします!