保育のコラム

発達障がいの子どもとの保育園での関わり方!クレーン現象やおすすめのおもちゃも紹介!

2020/09/10

厚生労働者が発表した「保育所における障がい児の増加」の調査結果によると、保育園において発達障がいをはじめとして障がいを持つ子どもの数が年々増えています。

一般的には、発達障がいのある子どもとの関わりで大切なのは、その子どもの特性を周囲が理解し、子どもがストレスを感じにくい環境を作ってあげることだと言われています。

しかし、発達障がいと一口に言っても、症状のあらわれ方はさまざま。

発達障がいの子どもの保育について「どのように対応するべきか」と悩む保育者も少なくないようです。

そこで今回は、発達障がいの子どもの特徴と、一人ひとりに寄り添った関わり方や、おすすめのおもちゃをご紹介します。

ずっと保育士編集部

【記事監修】ずっと保育士編集部

「ずっと保育士」は、保育ひとすじ28年の株式会社明日香が運営する保育専門のキャリアサポートサービスです。結婚や出産、育児など、目まぐるしく変わるライフステージの中で、その時その時にぴったり合うお仕事を紹介したい。そして、保育の仕事でずっと輝き続けるあなたを応援したい、という想いで保育士の就職、転職、復職などのキャリア支援を行っています。また、「ずっと保育士」では保育士さんの疑問や悩みなどを少しでも解決すべくコラムを通した情報発信も積極的に行っています。

そもそも発達障がいってどんな障がいなの?

発達障がいとは、生まれつきの特性で「病気」とは異なります。

生まれつき脳の発達が通常と違っているために、幼児から症状があらわれることが多いようです。

落ち着きがなかったり、対人関係やコミュニケーションに問題を抱えたり、学習に困難を抱えたりと症状はさまざまで、その特性により後述する3つの種類に分類されています。

ひとえに発達障がいと言っても、個人差も大きく、中には複数の症状がみられる場合もあるので、その子どもに合ったサポートが求められます。

発達障がいの種類と特性

発達障がいには3つの種類があり、「注意欠陥・多動障がい(ADHD)」「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」「学習障がい(LD)」のそれぞれで特性が異なります。

「注意欠陥・多動障がい(ADHD)」は、発達年齢に見合わない多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状が7歳までに発覚することが多いとされています。

「自閉症スペクトラム障がい(ASD)」は、相互的な対人関係の障がい、コミュニケーションの障がい、興味や行動のこだわりの3つの特徴がみられるものです。

また、全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみがとりわけ難しいといった特性がみられるのが「学習障がい(LD)」です。

それぞれどのような特徴があるか詳しく説明します。

注意欠陥・多動障がい(ADHD)

「注意欠陥・多動性障がい」は、多動-衝動性、あるいは不注意、またはその両方の症状がみられることが特徴的な発達障がいです。

年齢や発達に不釣り合いな行動が、集団活動や学業に支障をきたすこともあり、衝動的に行動したり、落ち着かずそわそわしたり、注意力も散漫で、忘れ物が多くなるなどの症状がきっかけで、7歳ごろまでに発覚することが多いとされています。

症状の程度によって、多動-衝動性、不注意優勢性、混合型に分類されます。

具体的には、次のような行動の特徴が特性ごとにみられます。

特性

行動の特徴

多動-衝動性優勢型

・座っていて手足をもじもじする

・喋りすぎる

・大人しく遊ぶことが難しい

・他人の会話やゲームに割り込む

不注意優勢型

・勉強でうっかりミスが多い

・一つの活動に集中し続けることができない

・整理整頓が苦手

・気が散りやすい

混合型

多動-衝動性優勢型と不注意優勢型の両方の症状が現れる

自閉症スペクトラム障がい(ASD)

自閉症スペクトラム障がいの子どもは、人に対する関心が弱く、他人との関わりやコミュニケーションの取り方に独特のスタイルがみられます。

また、一つの興味・事柄に関心が限定され、こだわりが強いといった特徴もみられます。

対人関係の特徴は1歳を過ぎた頃から次のようなサインとして現れ、保育園や幼稚園に入って、集団行動が増えると人との関わり方が独特で気づかれることがあるようです。

対人関係でのあらわれ方

・人の目を見ることが少ない

・指差ししない

・他の子どもに関心がない

コミュニケーションでのあらわれ方

・相手が嫌がっているのに一方的に話しかける

・呼びかけても返事をしない

・知らない人にでも構わず近づいて言ってしまう

興味・行動のこだわりのあらわれ方

・同じ動作を延々と続けている

・好きなことは何時間でも熱中する

・急なスケジュール変更にパニックを起こす

学習障がい(LD)

学習障がいの子どもは、全般的な知的発達には問題がなく、「読む」「書く」「計算する」など特定の事柄のみが難しい状態がみられます。

小学校2年生〜4年生ごろに成績不振などから明らかになることが多いようですが、読み書きや数などに興味を持ち始める3歳ごろに発見されることもあります。

学習障がいの特徴は、決してやる気がないからできないわけではないということです。

学業成績や日常生活に困難が生じ、学業に意欲を失い自信を無くしてしまうこともあるので、学習障がいの子どもへの接し方はとても大切となります。

3歳ごろからみられるサインとして、次のような行動が特徴だと言われています。

・靴をよく左右間違えて履いている

・言葉を覚えるのが遅い

・他の子に比べて不器用である

・よく転ぶ

・ハサミが使えない、折り紙、のりづけなどができない

保育園ではどんな配慮が必要?発達障がいに共通する基本的な関わり方とは?

保育園での子どもとの関わりに不安を抱える保育士さんも多いのではないでしょうか?

ここでは、3つの具体的な関わり方をご紹介します。

はっきりと短い言葉で具体的に伝える

言葉を聞いて理解するのが難しいと感じる子どももいるため、「ちゃんと」「しっかり」といった抽象的な表現は避けて「はっきり・短く・具体的に」伝えると、理解しやすくなります。

悪い例

良い例

・ちゃんと座りましょう

・あっちに置いてある大きな箱に片付けましょう

・きちんと並びましょう

・5つ数えるまで座っていましょう

・赤い箱に積み木を入れましょう

・列からはみ出さないように並びましょう

見通しが立てられるようにする

先の見通しがつかないことに不安を抱える子どももいます。そのため、保育園での活動では、ホワイトボードなどに1日の活動の流れを示す工夫をすると良いでしょう。マグネット式の絵カードを使用すると、子どもにもわかりやすく取り外しも簡単なのでおすすめです。

変化を少なくする工夫をする

場所や予定の変更といった「変化」を苦手とする子どももいるので、いつもと変わることがある場合には、事前に子どもにその変化の内容を伝え、可能な限り変化が少なくなる工夫をすると良いでしょう。

変化の例

対応方法

身体測定、誕生日会など、普段の生活と異なるイベントがある場合

・週の始まりに1週間の予定を伝える

・1日の始まりに予定を伝える

進級に伴って下駄箱やロッカーが変わる場合

・ロッカーの位置は前年度と同じ位置にする

・目印のマークを決めて卒園まで同じマークを使う

発達障がいの子どもの保育には「加配保育士」という制度もある

加配保育士とは、障がいを持った子どもが支障なく保育園生活を送るために、個別の配慮を行って、生活を手助けする保育士のことです。

加配保育士の役割は、障がいを持った子どもが集団生活に困らないように寄り添った援助を行うことです。そのため、既定の保育士にプラスして配置されます。

また、一般の保育士が障がいを持った子どもの援助を行うことによって、他の園児への保育が滞ることを避けるためにも加配保育士が求められています。

発達障がいの子どもによく見られるクレーン現象って何?

発達障がい(特に自閉症スペクトラム障がい)の子どもによく見られるクレーン現象は、自分の要求を、言葉や指差しで伝えるのではなく、お母さんや保育士など他人の手などを使って代わりに伝えてもらおうとする行動です。

例えば、近くに置いてあるジュースをお母さんの手首を掴んで取ろうとする行動をとります。その動きがクレーン車に似ていることがその名の由来です。

定型発達時では、欲しいものがある時には、「ジュースちょうだい」のように言葉で伝えたり、欲しいものを指差して示したりしますが、発達障がいの子どもの中には、言葉で表現することが苦手な子どももいるので、クレーン現象のような行動をとると言われています。

定型発達の子どもでも見られる場合も

クレーン現象は、必ずしも発達障がいの子どもだけに見られることではありません。

定型発達の子どもにも見られる場合がありますし、言葉の発達が未熟な1〜2歳の子どもであれば、誰にでも見られます。

そのため、このような行動があったからと言って、必ずしも発達障がいというわけではありませんので注意が必要です。

得意を発見しよう!発達障がいの子どもにおすすめのおもちゃ3選

発達障がいの子どもは、ひとつお気に入りのおもちゃを見つけると長い間遊ぶ傾向があります。

お気に入りのおもちゃ遊びで、その子の「得意なこと」伸ばすこともできますし、色々なおもちゃを体験させてあげることで、違った「得意なこと」を発見するきっかけにもなります。

ここでは、発達障がいの子どもにおすすめのおもちゃを3つ紹介します。

物理感覚を育む木の積み木

積み木は、もともと、物がバランスを保つ力や、バランスを崩して落ちる力、バランスそのものを伝える遊具として考案されました。

多い少ない、高い低い、2分の1や4分の1という感覚を積み木で遊ぶ中で自然と学習することができます。

発達障がいの子は、決まった形を作らせることは負担になりがちですが、自由に遊ばせてあげたり、積み木をどこまで積めるかチャレンジしてみたりすると楽しむことができます。

また、片付ける時には、パズルのように収納するなど工夫すれば、遊びながら頭の体操にもなります。

感覚を育む小麦粉粘土

水を多くしてトロトロにしたり、ベタベタにしたり、柔らかさを自分で調整しながら楽しむことができる小麦粉粘土は感覚を育むのに優れた遊びです。

発達障がいの子どもの中には、洋服など特定の肌触りのものに執着して、それしか着たがらない子もいます。

その原因が触覚の発達が足りていないため、という考え方もあるので、子どもが心地良いと感じる程度の柔らかさを調整できる小麦粘土は、感覚の発達を促すのに良いと言われています。

また、小麦粘土に好きな色の絵具を入れて、色彩を楽しむこともできます。もし、口に入れてしまう心配がある場合は、絵具を食紅にすれば安心して遊べます。

認知機能を高める手作りパズル

完成図をイメージしながら、ピースをはめていくパズルは認知機能を高める効果があります。さらに、好きな絵柄のパズルであれば、完成させる喜びをひとしおです。

お気に入りのキャラクターがいる場合は、そのキャラクターのイラストを印刷して、段ボールに貼り付け、適当な大きさにカッターで切り分けると手作りパズルの完成。

一つ一つのピースの大きさは、その子に合わせて作ることができます。

発達障がいの子どもの中には「負けるのがイヤ!」という子もいます。パズルは勝ち負け関係なく、間違えても何度でも遊ぶことができる上に、手先を使う練習にもなります。

一人一人の特性に合わせた保育をしよう!

お伝えしてきた通り「発達障がい」と一口で言っても、症状のあらわれ方は子どもによってさまざまです。

また、保育園で関わる園児は0歳〜6歳であり、成長過程も子どもによってバラつきがあります。

そのため、教科書通りの姿であることはなく、対応方法も合う子もいれば、合わない子もいるのは当然のことです。

年々、保育所における発達障がい児をはじめとする障がい児は増加傾向にありますが、今までの経験や学んできた知識を土台に、一人一人の特性を理解した上で保育を行うことが大事です。

また、一人で抱えず、園全体で知識とノウハウを共有し、発達障がいの子どもの保育については、担任だけではなく園全体で関わるのもおすすめです。

どの保育者も同じ接し方だと、子どもや保護者の安心にも繋がる上に、園全体の保育スキルの向上にも繋がります。

次の記事で、発達障がいの子どもとの関わり方と対応のケーススタディを紹介しているので、こちらも合わせて読んでみてください。

>>「保育士として知っておきたい発達障がいの子どもとの関わり方と対応のケーススタディ!

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