待機児童問題の原因と問題解決に必要な対策とは
2017/10/05
待機児童の数は、平成29年から令和5年の間に、約1/10まで激減しました。
しかしながら、いまだに待機児童数がゼロになっておらず、悩みを抱えている保護者がいるのも事実。
「待機児童問題」は、待機児童の数こそ少なくなったとはいえ、新しい問題と局面をむかえています。
そこで今回は、待機児童問題とその原因、そして問題解決に必要な対策についてご紹介します。
【記事監修】ずっと保育士編集部
「ずっと保育士」は、保育ひとすじ28年の株式会社明日香が運営する保育専門のキャリアサポートサービスです。結婚や出産、育児など、目まぐるしく変わるライフステージの中で、その時その時にぴったり合うお仕事を紹介したい。そして、保育の仕事でずっと輝き続けるあなたを応援したい、という想いで保育士の就職、転職、復職などのキャリア支援を行っています。また、「ずっと保育士」では保育士さんの疑問や悩みなどを少しでも解決すべくコラムを通した情報発信も積極的に行っています。
待機児童問題とは
「待機児童問題」とは、保育所に入所申請をしても、保育所が受け入れられる定員に限りがあるために入所できず、順番を待つ児童が発生する問題です。
子ども家庭庁「令和5年4月の待機児童数調査のポイント」によると、2023年4月時点の待機児童数は2,680人。
冒頭でもお伝えしたように、待機児童数は平成29年をピークに、令和5年までの6年間で23,401人減少し、約1/10になりました。
待機児童数が前年から減少した自治体へのアンケート調査では、保育の受け皿拡大(63.7%)や、申込者数が見込みを下回った(30.6%)ことが待機児童減少の要因として多く挙がったようです。
申込者数が見込みを下回った理由として、就学前人口の想定以上の減少や、育児休暇の長期取得がありました。
全国的に待機児童数の減少が見られる一方で、待機児童が0人の自治体もあれば、400人を超える自治体もあり、格差が開いているのが現状です。
待機児童問題の原因
近年は出生率が低下して少子化が進行、全国的に待機児童数は減少傾向にあるものの、なぜ待機児童問題が起こるのでしょうか。
待機児童問題の主な原因として、以下の3つが挙げられます。
【原因1】申込者数が想定以上に増加
待機児童の多い自治体の特徴として、人口増加率が高い傾向が見受けられました。
急激な人口の流入により、申込者数が想定以上に増加したことで、計画していた保育の受け皿の整備が不足したことが要因です。
令和5年において、前年より待機児童数が増加した自治体は134あり、そのうち58の自治体が昨年度の待機児童はゼロでした。
このことから、人口増加率の高い自治体ほど、早急な保育の受け皿の整備が必要と言えるでしょう。
【原因2】隠れ待機児童の存在
隠れ待機児童とは、希望の認可保育園などに入所できていないにもかかわらず、国や自治体の待機児童にカウントされていない子どもたちのことです。
その理由として、保護者が特定の園を希望していたり、求職活動を中止していたりするなどがあります。
全国的には待機児童数は減っているものの、実際は調査データよりも多くの子どもたちが保育施設に入所できていないと言われています。
【原因3】保育士の不足
保育施設を増やすことができたとしても、そもそも子どもを預かる保育士の数が不足していれば、待機児童問題は解決しません。
保育士には配置基準があり、子ども1人に対して国が定めた保育士の必要人数があるため、基準を満たしていない場合は子どもを受け入れられないのです。
また、子どもが好きで保育士になっても、実際に保育現場で働くと、給与の低さや仕事量の多さ、職場での人間関係などの理由で離職してしまうことも大きな問題です。
くわえて、保育士資格を保有していても、保育士として働いていない潜在保育士の存在もあり、国をはじめ、各自治体も貴重な保育士の確保に様々な施策を打ち出しているところです。
解決に必要な対策とは
待機児童問題の解決に向けた対策として重要なのは、やはり保育士の確保と言えるでしょう。
先述したように、いくら保育施設を設立したとしても、肝心な保育士がいなかれば、待機児童問題は解決しません。
国や自治体としても、様々な施策を打ち出して保育士の確保のために動いているところです。
以下は、保育士確保のための施策の一例としてご覧ください。
①【保育士の給与水準の引き上げ】
国は「保育士等処遇改善加算」 という制度を設けており、 保育士の給与を段階的に引き上げるようにしています。
たとえば、経験年数に応じた昇給や、役職に応じた加算などで給与アップの後押しをしています。
とはいえ、まだまだ給与が全産業の平均に追いついていないのも事実。だからこそ、継続的な取り組みが必要です。
保育士のモチベーションを上げることができれば、新たな人材確保への道も開けるでしょう。
②【職場環境の改善支援】
職場環境の改善支援も保育士確保には欠かせません。
そのひとつに、ICT化による業務効率化があります。
ICTとは、パソコンやタブレットを活用し、情報の管理や配信など、多種多様な機能が備わったシステムのこと。
電車やバスのICカード、銀行のATMなどは身近な代表例です。
保育士の離職理由として、仕事量の多さが問題視されているため、ICT化することで仕事量を大幅に軽減することができるでしょう。
これによって、子どもたちの出席確認や、保護者に対してのお知らせを一斉送信することができます。
国や自治体としても、ICTの導入に補助金を出しているので、大いに活用すべきではないでしょうか。
③【離職者の再就職を支援】
国は、保育士の就職にかかる準備金の貸付を行ったり、潜在保育士が就職するにあたり、ブランクを埋めるための研修費用を補助したりしています。
貸付に関しては、一定年数の勤務を条件に返還を免除することも。
このような対策は、 保育士のモチベーション維持や、眠っている人材の掘り起こしにつながります。
おわりに
今回は、待機児童問題の原因や解決策を解説してきました。
国や自治体も待機児童解消に向けて、多くの施策を打ち出しています。
その一方で、国や自治体に頼るだけでなく、園時代も独自の昇給制度を取り入れるなどして、保育士を支援する時が来ているのかもしれません。
明確な基準を設けることで、保育士のモチベーションは上がり、職場への定着率も向上するのではないでしょうか。
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待機児童の数は、平成29年から令和5年の間に、約1/10まで激減しました。
しかしながら、いまだに待機児童数がゼロになっておらず、悩みを抱えている保護者がいるのも事実。
「待機児童問題」は、待機児童の数こそ少なくなったとはいえ、新しい問題と局面をむかえています。
そこで今回は、待機児童問題とその原因、そして問題解決に必要な対策についてご紹介します。
【記事監修】ずっと保育士編集部
「ずっと保育士」は、保育ひとすじ28年の株式会社明日香が運営する保育専門のキャリアサポートサービスです。結婚や出産、育児など、目まぐるしく変わるライフステージの中で、その時その時にぴったり合うお仕事を紹介したい。そして、保育の仕事でずっと輝き続けるあなたを応援したい、という想いで保育士の就職、転職、復職などのキャリア支援を行っています。また、「ずっと保育士」では保育士さんの疑問や悩みなどを少しでも解決すべくコラムを通した情報発信も積極的に行っています。
待機児童問題とは
「待機児童問題」とは、保育所に入所申請をしても、保育所が受け入れられる定員に限りがあるために入所できず、順番を待つ児童が発生する問題です。
子ども家庭庁「令和5年4月の待機児童数調査のポイント」によると、2023年4月時点の待機児童数は2,680人。
冒頭でもお伝えしたように、待機児童数は平成29年をピークに、令和5年までの6年間で23,401人減少し、約1/10になりました。
待機児童数が前年から減少した自治体へのアンケート調査では、保育の受け皿拡大(63.7%)や、申込者数が見込みを下回った(30.6%)ことが待機児童減少の要因として多く挙がったようです。
申込者数が見込みを下回った理由として、就学前人口の想定以上の減少や、育児休暇の長期取得がありました。
全国的に待機児童数の減少が見られる一方で、待機児童が0人の自治体もあれば、400人を超える自治体もあり、格差が開いているのが現状です。
待機児童問題の原因
近年は出生率が低下して少子化が進行、全国的に待機児童数は減少傾向にあるものの、なぜ待機児童問題が起こるのでしょうか。
待機児童問題の主な原因として、以下の3つが挙げられます。
【原因1】申込者数が想定以上に増加
待機児童の多い自治体の特徴として、人口増加率が高い傾向が見受けられました。
急激な人口の流入により、申込者数が想定以上に増加したことで、計画していた保育の受け皿の整備が不足したことが要因です。
令和5年において、前年より待機児童数が増加した自治体は134あり、そのうち58の自治体が昨年度の待機児童はゼロでした。
このことから、人口増加率の高い自治体ほど、早急な保育の受け皿の整備が必要と言えるでしょう。
【原因2】隠れ待機児童の存在
隠れ待機児童とは、希望の認可保育園などに入所できていないにもかかわらず、国や自治体の待機児童にカウントされていない子どもたちのことです。
その理由として、保護者が特定の園を希望していたり、求職活動を中止していたりするなどがあります。
全国的には待機児童数は減っているものの、実際は調査データよりも多くの子どもたちが保育施設に入所できていないと言われています。
【原因3】保育士の不足
保育施設を増やすことができたとしても、そもそも子どもを預かる保育士の数が不足していれば、待機児童問題は解決しません。
保育士には配置基準があり、子ども1人に対して国が定めた保育士の必要人数があるため、基準を満たしていない場合は子どもを受け入れられないのです。
また、子どもが好きで保育士になっても、実際に保育現場で働くと、給与の低さや仕事量の多さ、職場での人間関係などの理由で離職してしまうことも大きな問題です。
くわえて、保育士資格を保有していても、保育士として働いていない潜在保育士の存在もあり、国をはじめ、各自治体も貴重な保育士の確保に様々な施策を打ち出しているところです。
解決に必要な対策とは
待機児童問題の解決に向けた対策として重要なのは、やはり保育士の確保と言えるでしょう。
先述したように、いくら保育施設を設立したとしても、肝心な保育士がいなかれば、待機児童問題は解決しません。
国や自治体としても、様々な施策を打ち出して保育士の確保のために動いているところです。
以下は、保育士確保のための施策の一例としてご覧ください。
①【保育士の給与水準の引き上げ】
国は「保育士等処遇改善加算」 という制度を設けており、 保育士の給与を段階的に引き上げるようにしています。
たとえば、経験年数に応じた昇給や、役職に応じた加算などで給与アップの後押しをしています。
とはいえ、まだまだ給与が全産業の平均に追いついていないのも事実。だからこそ、継続的な取り組みが必要です。
保育士のモチベーションを上げることができれば、新たな人材確保への道も開けるでしょう。
②【職場環境の改善支援】
職場環境の改善支援も保育士確保には欠かせません。
そのひとつに、ICT化による業務効率化があります。
ICTとは、パソコンやタブレットを活用し、情報の管理や配信など、多種多様な機能が備わったシステムのこと。
電車やバスのICカード、銀行のATMなどは身近な代表例です。
保育士の離職理由として、仕事量の多さが問題視されているため、ICT化することで仕事量を大幅に軽減することができるでしょう。
これによって、子どもたちの出席確認や、保護者に対してのお知らせを一斉送信することができます。
国や自治体としても、ICTの導入に補助金を出しているので、大いに活用すべきではないでしょうか。
③【離職者の再就職を支援】
国は、保育士の就職にかかる準備金の貸付を行ったり、潜在保育士が就職するにあたり、ブランクを埋めるための研修費用を補助したりしています。
貸付に関しては、一定年数の勤務を条件に返還を免除することも。
このような対策は、 保育士のモチベーション維持や、眠っている人材の掘り起こしにつながります。
おわりに
今回は、待機児童問題の原因や解決策を解説してきました。
国や自治体も待機児童解消に向けて、多くの施策を打ち出しています。
その一方で、国や自治体に頼るだけでなく、園時代も独自の昇給制度を取り入れるなどして、保育士を支援する時が来ているのかもしれません。
明確な基準を設けることで、保育士のモチベーションは上がり、職場への定着率も向上するのではないでしょうか。